ガンダムAGE「小説版1巻」

第二部の前に、先日リリースされた小説版のAGEをちょっとネタにしてみます。

 
シナリオとしてはTVでの第一話から六話ラストまで。
ファーデーンでザラムとエウバのドンパチに初めて介入した辺りまでとなります。
丁度1/2クール分なので、二巻は此処から第一部ラストまでかな?
 
で、問題の中身なんですが、TV版での「・・あれ?」という部分がほぼ全て「改良」されています。
http://subcultureblog.blog114.fc2.com/blog-entry-6179.html
ここのまとめから気になるトコをコピペされていただきますが
 
・UE襲来予測は登校中にエミリーに言うだけで学校ではぶちまけない
 当然ブルーザーにも報告済みでグル―デックらに分析もしてもらっている
ガンダムは姿勢制御プログラムが未完成の為ラーガンはジェノアスで普通に出撃して奮闘する
・前夜に徹夜で組み上げていたプログラムでフリットは出撃
・初戦闘時の補足。「技術者としてテストもしてない武器を使いたくなかった」
 と思いつつもダガーで首関節貫いて勝利
・避難中のディケ、祖父と共にAGEビルダーを搬送中のエミリーに会い手助けを頼まれて一緒にディーヴァに
・本編より高圧的なグルーデックの命令でフリットはそのままコロニー内を転戦
・グルーデックはディアン達正規クルーを射殺(ブルーザーも内心それを予測しつつディーヴァ指揮を命じた)
・ユリンと遭遇時、スプレーガンを使用するのは無し
・ノーラ駐留軍の描写追加、フリットの前で女性ジェノアパイロット死亡
・エミリーとディケがAGEビルダーの操作に参加(軍時機密に触れたとして二人はディーヴァから降りられなくなる)
・DODS(ドッズ)=Drill-Orbital Discharge System=機械穿孔電子軌道放出システム
・ゼダス戦無し。ユリンの助言も無し。ブルーザー特攻なし、コロニー切り離しの為残って死亡。
 フリットはそれを後から知らされる
・ユリンのリボンはブルーザーの死に泣くフリットにハンカチ代わりとして渡される
・ディケの掘り下げ 「エミリーがお前のこと好きで、この船に残ってること、わかってるんだろうな?」
 「……僕は、やらなくちゃいけないんだ。このガンダムで」
 「またそれだ。お前、ガンダムの怨念に、取り込まれてるんじゃないのか?時々、気味悪いよ」
ジェノアス隊はラーガン以外にも健在、ウルフのエースの称号は連邦内での反乱鎮圧での戦果から
・デシルはフリットの案内でなく単独でディーヴァに潜り込む
・リリアは再開発作業の手伝い中に落下したMSによる崩落事故に巻き込まれる
デスペラードイワーク個人所有でなく作業用の物をフリットがパス解析して救助用に持ち出す
フリットはそのままデスペラードで戦闘に介入してラクト機を擱座させる
・最終的にラーガン率いるジェノアス隊が戦闘を中止させる
 

 
大筋の流れはTV版と同じなんですが、要所要所でのキャラの言動や行動に説得力が有る感じになっています。
特に第一話相当のノーラへのUE襲撃はF91がイメージ近いです。
民間人がサクッと死んだりする描写が挟まるので、絶望的な緊迫具合になってます。
プロット段階で「此処で誰々が死ぬ」みたいなフラグが立っているのは同じなんですが、そこへ至る描写なんかが別物だったりしますぜ。
 
特に強く感じたのは「フリット」「ディケ」「グルーデック」の三人の掘り下げがかなりなされており、キャラクターへの印象がかなり変わりました。
以下、ざっとですがメモ書き程度に。
 
フリット
小説版での第一印象は「初代のアムロの思考+無印序盤キラ・ヤマトの異能具合+序盤ドモンの執念(+ガンダム主人公歴代の朴念仁っぷり)」でしょうか。
アスノ家の血統もさることながら、独学でAGEデバイスを解析してAGE-1を建造するまでの日々がエミリーの回想で語られており、凄まじい執念でガンダムを作った事が伺えます。
まさしく「本物の天才が死に物狂いで努力した結果」というのが第一部のフリットであり、ブルーザー司令に引き取られてからの彼の人生はストイックの極地みたいな雰囲気だったのでしょう。(おかげで娯楽や世間の流行の類に物凄く疎いのですが)
また、軍の中でも結構可愛がられていたようで、ラーガン以外の兵士にも家族のように思われていた様子。
AGE−1の建造にも基地ぐるみで協力してもらっていた事が伺えます。
 
因みにAGEデバイスですが、実はアレ自体もロストテクノロジーの塊みたいな物で、携帯型量子コンピューターという物凄いアイテムです。
 
・ディケ
こちらも小説版での立ち位置は「初代のハヤト・コバヤシ+無印SEEDのキラの友人男三名」でしょうか。
「異能の天才に対するカウンターとしての凡人」という重要な役回りであり、機械工学系の簡単な免許を持っているのでバルガスの助手になります。
(最初の戦闘で本来のバルガスのチームはほぼ死亡したとの事)
劇中でもフリットとの会話で凡人らしさも有りつつ結構良い事言ったりしてます。
少なくともTVでは「何でお前此処に居るの?」というまま第一部が終わりましたが、こちらでは絶対に必要ですw
ついでにバルガスなんですが、肩書は「ノーラ駐留軍内部での次世代MSの開発主任」ぐらいになっている模様。(TVだと単なる町工場のおじさんですが)
何気にかなり階級が高い扱いを受けており、孫娘のエミリーを通じてフリットが顔パスなのもバルガスの庇護の要素も大きいようです。
 
・グルーデック
この人もTVよりも有能/冷徹さが演出されていますね。
本来のディーヴァスタッフを容赦無く射殺した上で、死体を通路ごと爆破してUE襲撃のせいにしたりしてます。
また、かなり前からUEに対しても研究をしていたようで、フリットのUE予測も含めて「当たり」を付けていたと感じました。
本格的な描写はもう少し先になりますが、心情の吐露を含めてこの人周りの改変が気になる所です。
 
カニック的な部分でもTVより補完されており、文字だけですが「ジェノアスキャノン」などのバリエ機体も有ったり。
ノーラ守備隊のエースには試験的にAGE-1のビームダガーと同じ物が装備されていたりするのもポイント。
また、ドッズライフルの解説もしっかりしており、かなりのテクノロジーが使われている事がちゃんと判ります。
 
機体操縦に関してはウルフとデシルの操縦技術の天才具合がミソ。
特にウルフとの模擬戦〜UE艦遭遇&撃退までの流れはウルフの活躍が光ります。
 
そして何よりも重要なのが「この時点での地球」について言及されている事。
以下、ウルフとフリットの会話抜粋。
 
銀の杯条約の背景
「ガキのお前にゃわからんかもしれんが、今、地球圏のあちこちではゴタゴタが起きてる。
 ゴタゴタと言っても、殴りあいやもめ事のことじゃない。MSを使った殺し合いだ」
「そんな!銀の杯条約でMSによる戦争は放棄されたって」
「建前はそうだ。だが、14年前、UEが現れて連邦軍が組織されるようになると、
 民間自衛のたてまえで、MSの個人所有がなし崩しに認められるようになった。
 そうなれば、手に入れた武力で問題を解決したくなるのが人間ってやつだ。
 オレはこの間まで、そういうバカどもと戦争をしていた」
「人間同士の……?」
「もちろん、戦争は根絶された建前だからな。反乱行為の鎮圧、ってことになってる。
 そもそも、人類政体は地球連邦しか存在しないしな――
 ―で、そこでお前みたいな年頃の兵士はたくさん見たよ」

 
敵が居ない筈の連邦でウルフがエースと言われる所以が此処に。(この時点ではUEの正体は不明)
で、このMSの情報を撒いていた人物こそがヤーク・ドレなんですわね。
ドレさん大活躍してるんですわ・・・
この話から察するに、現在の地球はアリーアル・サーシェスみたいのがゴロゴロしてる事になります・・・(ヤバいのはウルフさんが既に討伐したと信じたいですが)
 
また、ウルフがフリットガンダムを賭けて勝負を申し込む下りも
少年兵を殺すような人間同士の戦いでエースとして祭り上げられた自分が嫌になって最前線(対UE)に志願し「ガキは戦場に出るべきじゃない、出す奴はクズだ」という信念に基づいてフリットに戦いをやめさせたいから、とウルフがラーガンに対して真意を明かすという流れになってます(フリットに決闘を吹っ掛けた後で、ラーガンと二人きりでの会話)。
その上で模擬戦をして、フリットの才能と信念と意思を認める事で良い関係になるんですが。
 
その他、違いを挙げればキリが無いんですが、全編通して色々と補完されてますので、AGEに失望気味の方々にこそ読んで頂きたい!
本屋での扱いを見る限り、あんまり部数刷って無い感じなので「買える時は今」かもしれないのですがw